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第36回梓会出版文化賞 受賞のことば


梓会出版文化賞一般財団法人 東京大学出版会
同 特別賞株式会社 ゲンロン
第17回 出版梓会
新聞社学芸文化賞
一般財団法人 京都大学学術出版会
株式会社 晶文社

■ 大学出版部協会加盟社共同受賞の挨拶

一般財団法人 東京大学出版会 専務理事 黒田 拓也
一般社団法人 京都大学学術出版会 専務理事 鈴木 哲也

 このたび、出版梓会様より、梓会出版文化賞および新聞社学芸文化賞を私ども大学出版部が共に賜りましたこと、まことに光栄に存じます。関係者の皆様には、心より御礼申し上げます。異例のこととは存じますが、東京大学、京都大学の出版部が並んで受賞したことに特別の意味を込め、以下、共同での受賞の言葉としたいと存じます。...続きを表示/非表示

 出版梓会は1948年、戦争で荒廃した我が国の出版界と読書文化の復興を目標に、有志出版社42社により設立されました。その後、1984年に社団法人、2012年に一般社団法人として発展し、創立精神に示されるように、専門知が平和と人類の福利のために貢献する、その媒介者として活動してきました。その歴史と、学術知を巡る昨今の情勢に鑑みますと、今回、私どもが並んで受賞いたしましたことは、特に大きな意味あるものとして、受け止めております。

 新型コロナウイルス感染症 COVID-19のパンデミックによって、私たちは、環境に対する人類の侵襲がもたらす感染症の脅威への認識の甘さを思い知りました。感染者の治療、ワクチンの開発などの重要性が強調されますが、経済、政治、外交、教育、福祉など、社会関係のあり方の根底をゆるがす問題が突きつけられていることに鑑みれば、医療・医学分野の営みはもちろん、広く学術知全般が果たす役割について、私たちは特に自覚する必要があります。

 しかし、学術知、特に人文知の重要性について、いま社会的合意が広く形成されているかと言えば、残念ながらそうではないと言わざるを得ません。遡れば、国立大学の教員養成系と人文・社会科学系学部・大学院の廃組や転換を求めた2015年の文部科学大臣通知(いわゆる6・8通知)、そして、当時それに強く抗議した日本学術会議に対する今般のいわゆる「会員任命拒否問題」は、大変残念なこととして、深い懸念を表明するものです。しかし自省的に捉えれば、こうした事態は、もちろん政治問題という性格を強く持ちますが、むしろ、社会と学術知の関係性の問題として根源的に捉えるべきである、と私どもは考えています。

 世界的ベストセラー『サピエンス全史』で、人々の幸福と社会の構造を人類史から捉えたユヴァル・ノア・ハラリ氏が指摘するように、COVID-19のパンデミックは、「異なる「正しさ」の衝突のなかで、いかに民主主義を守る「解」を導きだすのか」 という問題を、人類社会全体に突きつけています。この問いは、文字通り精神価値の根幹に関わる問題として、哲学や歴史学が議論すべき課題であると同時に、一人一人の生き方の問題として、専門家にただ任せること無く、生きる実践の問いとして私たち皆が考えるべきことなのではないでしょうか。そうした実践の知を育む上で、人文学、社会科学の持つ役割は無限といえるほどに大きい。そして、医学や自然科学はもちろん、こうした学術知全般について、専門家と社会をつなぐのが専門図書出版の責務です。昨今の問題は、専門出版社が、その責務をまだ十分に果たし得ていないが故ではないのか、とも捉えられるでしょう。

 このたび、専門図書出版の中でも、とりわけ直接に学術界と接し、学術知と社会を結ぶことを目的として掲げてきた私ども大学出版部に、梓会出版文化賞、新聞社学芸文化賞いずれも本賞を賜りましたことは、こうした知の媒介者としての役割を改めて深く自覚する契機にせよというメッセージだと受け止め、身の引き締まる思いでおります。

 選考にあたられました皆様に重ねて御礼申し上げますとともに、今後とも、より精進して皆様のご期待に応えて参る所存です。改めまして、このたびは、本当にありがとうございました。

■ 梓会出版文化賞 受賞のことば

一般財団法人 東京大学出版会 黒田 拓也

東京大学出版会は本年3月で70周年を迎えます。そうした記念の年にこうした栄誉ある賞をいただけたことは、これまで約7、800点あまりの本会の刊行物に関わって来たすべて著者の皆さま、本会の先輩たち、書店・販売会社の皆さま、そして何より読者のみなさまの支えあってのことです。そのことに心から感謝申し上げたいと存じます。...続きを表示/非表示

 選考委員の五十嵐太郎先生は「選考のことば」で、本会の設立者のお一人である南原繁先生の理念が改めて大きな意味をもつことに言及されています。政治学者の加藤節先生によりますと、南原先生は「イデアル・リアリスト」として自己規定し、「理想主義と現実主義の二元化を廃棄せよ」という問いかけをなされていると指摘されています(『思想』2020年12月号「思想の言葉」より。以下の引用も同じ)。そこでは、「理念の実現には、現実の中に理念の実現を阻む要因を、あるいはその実現を可能にする条件を可能にするリアルな認識が不可欠であり、「理想主義に立って高い理念を掲げれば掲げるほど、その実現の可能性を探る冷徹な実主義に徹することが要求される」、そういう態度を持つことの重要性が述べられています。学術出版という、学問の高い理想を掲げつつ、かつ少しでも多くの読者に出版物を開いていく活動を意味あるものにするためには、南原先生のような「イデアル・リアリスト」としての態度がきわめて大切なことを、いまこの時代に改めて実感いたします。

 本会の設立趣意書には、「大学に於ける研究とその成果の発表を助成するとともに、広く一般書、学術書の刊行により学問の普及、学術の振興を図る」とありますが、本会の第二代会長でもあり、現在の東京大学教養学部の最初の学部長であった矢内原忠雄先生は、学術書・教科書・教養書の三位一体の刊行という、本会の今に生きる出版方針を主導してくださいました。学術書だけでなく、学問の成果を広く世に還元していくための大学の教科書と一般の方々に向けた教養書を刊行する。それらがすべて組み合わさって「大学出版」というものが形作られていくのだ、というように理解しています。現在のわれわれの出版活動が十分にそれに値しているか悩ましいところではありますが、矢内原先生が掲げてくださった方針を追求して「大学出版」の理想に少しでも近づいていきたいと思います。

 今回の受賞にあたり、本会の図書目録を改めて眺めてみました。そこには古くて厚みのあるバックリストがあり、それら一冊一冊が本会の活動を支えてくれています。しかし、それだけでは事業は継続できません。出版物は常に新しいものとの出会いから生み出されます。「古さ」と「新しさ」の絶妙なバランスを追い求め、本会の次の70年も読者の皆さまにとって意味のあるものになるよう、今回の受賞を励みに、さらなる挑戦を続けて参りたいと存じます。

■ 梓会出版文化賞特別賞 受賞のことば

(株)ゲンロン 代表取締役社長 上田 洋子

このたびは第36回梓会出版文化賞特別賞に選出いただき、まことにありがとうございます。名誉ある賞をいただきましたこと、たいへん嬉しく、光栄に存じます。...続きを表示/非表示

株式会社ゲンロンは2010年に批評家・思想家の東浩紀が創業した出版社です。以来、出版を基盤としつつ、知のプラットフォームをつくり、維持する活動を続けてまいりました。2018年12月に東が代表を退いて以来、私、上田洋子が代表を務めておりますが、東はいまも経営の中核にかかわり、また社の理念やビジョンを担う存在であり続けています。2020年4月に創業10周年を迎え、11年目のタイミングで梓会出版文化賞特別賞を受賞することができたのは、ひとえにこれまでゲンロンを支えてくださったみなさまのおかげです。これを力に、今後も出版文化に微力ながら貢献すべく、力を尽くしてまいりたいと思います。

ゲンロンはとても小さな出版社で、年間の書籍刊行点数は電子書籍のみのものを含めて20点ほどです。紙の本と雑誌に絞ると年間10点未満、10年間の物理書籍の刊行総数は100点もありません。さらに書店に並んだものだけを数えると、50点にも満たないほどです。しかし、ゲンロンは出版社として、本や雑誌をつくること以外の活動にも力を入れてきました。2013年より東京・五反田に「ゲンロンカフェ」というスペースを構え、年間100本程度のトークイベントを開催し、その模様をインターネットで有料配信しております。私たちは、こうした活動も出版文化の一形態だと考えています。

もちろん、トークイベントと本では、同じ言葉を使っていても、密度も、作法も、受け手への届き方も異なります。そもそも書き言葉と話し言葉は異なります。とはいえ、言葉で状況を描写し、また考えや理念、精神などを伝えようとする点では同じです。ゲンロンカフェのトークはほとんどが4時間以上の長時間で、書き言葉にするまえのラフなアイデアを含め、考えていることが存分に話され、その強度を試される場となり得ています。興味深い新刊を出された著者の方をお招きしてお話を伺うこともあれば、トークでさまざまな本が紹介されることも少なくありません。考えてみると、書物の関係しないイベントはほぼ存在しないのかもしれません。もちろん、トークイベントから本が生まれることもあります。

本は読まれたり言及されたりして、息を吹き込まれ、語り継がれ、次の世代に受け継がれていきます。ゲンロンは自ら著者である東浩紀が運営する会社だからこそ、いかに過去や現在の本を生かし、後世に繋いでいくか、時代に合致した手段を探し続けているのだと言えるかもしれません。書き言葉と話し言葉がタッグを組むことで、ひとの思考の営みが継承される確率は高くなるはずです。

2020年、ゲンロンは「シラス」という放送プラットフォームを立ち上げました。シラスではゲンロンのイベントの中継のみならず、さまざまな個人がチャンネルを持ち、いま考えていることが語られています。語られた思考が書き言葉に整理されて、また新しい本が生まれていくでしょう。シラスの目的のひとつに「観客を育てること」があります。書物がいまのように流通していない時代、演劇や語りは重要なメディアでした。シラスのような配信プラットフォームは、語りを通じて情報や思考を届けるものです。書物が簡単に手に入り、また知的なトークの配信が気軽に見られるいま、ゲンロンは書かれた言葉と語られた言葉が共振する場であり続けたいと思います。

著者、登壇者のみなさま、読者、視聴者のみなさま、そして出版文化にさまざまな形でかかわっているすべてのみなさまに心より感謝いたします。ひとが考えることを大切にするという文化を担い、守っていくべく、これからも頑張ってまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

■ 出版梓会 新聞社学芸文化賞 受賞のことば

一般社団法人 京都大学学術出版会 専務理事 鈴木 哲也

京都大学学術出版会(以下当会)は1989年に創立されましたが、その歴史は、「大学設置基準改訂」から「国立大学法人化」を経て大学教育の再編成に至る、高等教育の大きな変化の時期に重なっています。同時にこの時期は、研究の高度化、細分化、発表論文数の急増が進み、学術と社会の関係性が大きく変わった時期でもあります。当会は1996年に組織改革を行う中、大学出版部こそこうした変化に正面から向き合い、変化に対して受け身になるのではなく、学術コミュニケーションの担い手の立場から、教育・研究のあり方をも提案していくべきだという問題意識のもと、活動して参りました。...続きを表示/非表示

 その特徴の一つは英文書の刊行です。日本が誇る研究を世界に発表すべく、海外を拠点に編集校閲・制作から販売までを行うことで多くの英文書を刊行しています。第二の特徴は、あらゆる知的活動を支えるメタ知識としての古典を重視した出版、第三には、細分化された専門的関心を越えて、関連分野に関する広い知見を体系的に示す包括的概説書の刊行、そして第四に、「大学院重点化」によって活性化した若手研究の成果を単著として積極的に出版する活動です。おかげさまで、いずれの分野でも、多くの学会賞・出版賞を輩出するなど成果を上げて参りましたが、一方、学部生向けの「教科書」の出版は積極的に行わないという方針を立てたせいもあり、広く学術と社会を結ぶという意味では、十分な役割を果たせていないかもしれません。

 その点ではこの10年間あまり、学術書は著者の専門の「二回り、三回り外」の読者へ向けて書いて欲しい、また、学術書の読者は自分の「専門外の専門書」を読んで欲しい、という立場で本作りに当たって参りました。そのための実践書として、『学術書を書く』『学術書を読む』という小書も刊行して参りましたが、今回、読売新聞社の松本良一様の受賞講評で、そうした努力についてもご評価いただいたことは、何より励みになりました。このたびの受賞は、小会の活動を学術界内部のコミュニケーションに止めることなく、さらに広く、市民に向けた出版にも心せよというご鞭撻とも受け取りました。

 選考にあたられました皆様に重ねて御礼申し上げますとともに、今後とも、より精進して皆様のご期待に応えて参る所存です。改めまして、このたびは、本当にありがとうございました。

 このたびは、第17回出版梓会新聞社学芸文化賞をいただきましてありがとうございました。まずは選考委員の皆さま、また関係者の皆さま方に厚くお礼を申し上げます。

■ 出版梓会 新聞社学芸文化賞特別賞 受賞のことば

(株)晶文社 代表取締役社長 太田 泰弘

 この賞は業界で唯一といっていい「出版社」そのものを顕彰するものであります。私はたまたま今ここに立っておりますが、本来ならば社員全員を壇上に立たせたいところであります。また弊社にとっては1990年に第6回梓会出版文化賞をいただいて以来2度目の受賞となります。1960年創業の会社ですので30年目に賞をいただき、またこの度は前回から30年目での受賞となりました。これは何よりも長い間読者はじめ皆さま方の厚い支持があったからこそと思います。実に感慨無量でございます。...続きを表示/非表示

出版会社としての崇高な理念などを語ることがこの場としてはふさわしいのでしょうが、わたくしが社長としてやってきたことは「資金繰り」が主たる仕事のような気がしております。またそのことに自負もあります。しかしこの場での話としては色気にかけます(笑)。でもありがいことに、いただく賞には副賞の賞金がございます。今回は2度目ということもありそれにまつわるお話を少しだけさせていただこうかと思います。

 1度目は(当時を知る者からの伝聞ですが)、早稲田大学理工学部の石山修武教授の「職人共和国だより〜伊豆松崎町の冒険」を刊行した際、伊豆の長八美術館(石山修武設計の代表的な建造物)の売店で本の販売を依頼したそうです。それが思いのほかよく売れて「この売店での目標500部販売を達成したら、社員旅行で松崎にやってきますね」と担当者が口走ってしまい、実際にそれが達成して困っていた、まさにその時に梓会出版文化賞受賞の報であったらしいです。特急伊豆の踊り子号を使って社長の中村勝哉以下当時の全社員(当時の社員は10数人とか)で1泊2日の社員旅行だったそうです。もちろん社員の負担はゼロで松崎町の観光と温泉旅館を堪能したとのことです。ちなみに当時の副賞賞金は30万円だったと聞いています。

 2度目の今回はコロナ禍の真ただ中で社員旅行どころではありません。正直言って資金繰りも苦しい中の副賞賞金(今回は50万円)は願ってもない「きんす」です。すこしだけ会社の運転資金に回そうかと迷いながら、神田神保町にて商いをさせていただいている以上は少しでも地元および出版業界にお返しをさせていただきたい。そんな気持ちから地元の書店さんにて副賞賞金で図書券を購入させていただき社員全員に配ることといたしました。

 様々な場で名刺交換をさせていただくと「学生時代は御社の本をよく買わせていただきました」とか「いい本をお出しですねぇ〜、自宅の本棚は”サイのマーク”だらけですよ」とよくおっしゃっていただきます。出版業がなりわいで良かったと思う時であります。会社を生き生きとさせるためには、その会社の”ファン”をつくることではないでしょうか。今後とも一人でも多くの”晶文社ファン”を増やしていけたらなあ、との思いを強くいだく次第でございます。

この度は出版梓会様よりいただきました受賞を大きな励みとして、出版の原点を忘れずに1冊1冊心を込めて作り続けていきたいと思います。

なお最後に一言だけ付言させていただきます。金融機関の皆様方、特に文化産業信用組合様のご支援があったればこその事業継続に感謝をしてもしきれません。どうしてもこのことだけは言いたかった太田でございます。30年後には3度目の受賞を目標といたします。(笑)。本日はほんとうにありがとうございました。

 

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